抄録
宇宙微小重力環境下でエンドウ(Pisum sativum L. cv. Alaska)を発芽,生育させると,黄化芽生え上胚軸は子葉から離れる方向に傾斜した伸長(いわゆる自発的形態形成)を示すと共に,オーキシン極性移動能が著しく低下する.この様な自発的形態形成は,3次元クリノスタットにより作出された疑似微小重力環境および1g下におけるオーキシン極性移動阻害剤の投与により模写できることから,自発的形態形成におけるオーキシン極性移動の関与が示唆された.オーキシン極性移動には,原形質膜に存在するefflux 及びinflux carrierタンパク質が重要な役割を果たしている.本研究では黄化エンドウ芽生えを対象に,オーキシン極性移動システムの構築を分子レベルで解析し,自発的形態形成との関係を解明することを目的とした.黄化エンドウ芽生えにおいてオーキシン極性移動関連遺伝子と推定されるPsPIN1及びPsAUX1の存在を確認した.PsPIN1 cDNAをクローニング後,塩基配列を決定した結果,シロイヌナズナAtPIN遺伝子群との間に高い相同性を認めた.また,黄化芽生えの各器官及び各生育段階においてPsPIN1及びPsAUX1の発現が認められた.これらの遺伝子発現に対する疑似微小重力およびオーキシン極性移動阻害剤の影響を調べ,オーキシン極性移動と自発的形態形成との関係を考察したい.