日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ヤマザクラにおける疑似微小重力下の光合成
*菅野 真実伊野 良夫中村 輝子
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p. 693

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抄録
当研究室において、疑似微小重力環境を作出する三次元(3D)クリノスタット上で培養したヤマザクラ幼植物は、地上植物と比べて、その茎の支持機能の発達が著しく抑えられることを明らかにしてきた。そこで本研究では、3D上植物の光合成活性について検討したので報告する。ヤマザクラ幼植物を材料とし、地上および3Dクリノスタット上で4週間培養した。光合成活性はLI6400 portable photosynthesis meter (LI-COR, Inc., USA)を使用して測定し、クロロフィルはaおよびbの量を測定した。また葉、茎および根は、各器官に分けて凍結乾燥し、その重量を測定した。3D上植物および地上植物の光合成活性は約3μmol CO2 m-2 s-1、クロロフィル含量は約0.34 g m-2、クロロフィルa/bは約3、気孔密度は240~250 mm-2であり、両者間に相違は認められなかった。一方、個体あたりの葉面積および葉の乾燥重量は3D上植物の方が地上植物よりも大きかった。本研究により、3D上植物の光合成活性は地上植物と同等であり、光合成活性は重力環境の変化には影響されないことが、樹木において初めて明らかとなった。さらに、3D上植物において増加した光合成産物は、主に光合成器官である葉の成長に用いられ、支持機能を担う茎や根への分配率が減少する傾向が認められた。
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© 2003 日本植物生理学会
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