抄録
車軸藻節間細胞が淡水中に有るとき、通常7気圧以上の膨圧φを維持している。これは細胞内外の浸透圧差Δπによる外向きの力、又は細胞壁の応力に対応する。細胞外液を高張にすると、Δπが減少するので細胞膜を介した水の流出が起こり細胞は収縮をする。しかし、細胞壁の力学的性質により、収縮率は極めて僅かであるため(0.4%)、細胞壁の張力の減少として観察される。細胞壁の張力の時間変化は、細胞に比較的ゆっくりした一定の振動数と振幅の正弦波振動(10Hz)を与え、振動の細胞による吸収率の時間的変化を歪み計によって測定した。ここで、細胞を適当な浸透圧π(150mM mannitol)の外液に順応させた後、Δπを増大又は減少(±100mM)させることで、細部膜の張力の時間的変化(水の出入りの速度変化)を求めることができる。その時間的変化は、細胞膜を介した水の流入または流出の相対速度に対応すると考えられるので、細胞膜にかかる力(浸透圧差Δπ)とその時の水の相対流速から、細胞膜の水透過性の時間的変化が算出できる(時間分解能=100msec)。その結果、細胞膜の水透過性には方向性(整流性)は見られなかった。先人の観察による整流性は、細胞膜表面に、接近した外液と外液の熱力学的性質に起因すると思われる(non-intrinsic)。