抄録
アルミニウム(Al)は根端伸長域において細胞伸長を阻害する。一方、細胞伸長は水ポテンシャルに依存することから、本研究では、タバコ培養細胞を用い、Alによる細胞増殖への影響を水ストレスから検討した。対数増殖期のタバコ培養細胞をカルシウムとショ糖のみを含む単純な培養液に懸濁し、Al (50 μM)を添加して18時間の培養を行った結果、Al処理細胞の水分含量はAlを添加していないコントロール細胞の70%程度に低下し、同時に増殖能も30%まで低下した。このようなAl処理細胞において原形質膜の透過性は、エバンスブルーの取り込みで見る限り、コントロール細胞と同程度であった。一方、Al処理細胞の浸透圧は、コントロール細胞の80%程度に低下していた。さらに、コントロール細胞とAl処理細胞から各々プロトプラストを調製し、低張液ならびに高張液に懸濁することにより水の透過速度について比較検討した結果、Al処理細胞では水の取り込み速度がコントロール細胞の1/4に低下し、水の排出速度が8倍に増加していた。以上の結果より、Al処理により細胞内の浸透圧が低下し、水の取り込みが抑制されて水分欠乏となり、細胞伸長が阻害さる可能性が示唆された。