日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シャジク藻節間細胞表面からの水の蒸散と、水溶液表面からの水の蒸発
*清沢 桂太郎
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p. 98

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抄録
Tazawa and Okazaki (1997)は、カイワレダイコンの下胚軸表面からの水の蒸散をその重量の減少から求め、時間に対して直線になると報告した。この現象は当然のように見えるが、また奇妙でもある。なぜなら、下胚軸表面から水が蒸散すれば、それらの細胞内の細胞液の濃度は上昇し、濃度が上昇すれば、水は蒸発しにくくなるはずであるから、蒸散量は時間とともに減少するはずである。そこで、私はシャジク藻節間細胞からの水の蒸散速度を、25℃で相対湿度を制御した状態で測定するとともに、蒸留水、シャジク藻の細胞液とほぼ同じ濃度である300 mMマンニトール水溶液、およびその約二倍の濃度になる500 mMマンニトール水溶液と278 mM KCl水溶液表面からの水の蒸散速度を測定して比較した。得られた結果は次のようであった。(1)シャジク藻節間細胞表面からの水の蒸散は、時間に対して直線的で、(2)蒸留水、300 mM、及び500 mMマンニトール水溶液、278 mM KCl水溶液表面からの水の蒸発は、時間に対して直線的で、その蒸発速度は用いた水溶液の濃度範囲では、濃度依存性はなかった。したがって、カイワレダイコン下胚軸、およびシャジク藻節間細胞表面からの水の蒸散が、時間に対して直線的であることは、蒸留水及び、これらの濃度の水溶液からの蒸散速度に濃度依存性がないことで説明できる。これらの結果について、熱力学的に説明を試みて、ほぼ矛盾なく説明できた。
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© 2003 日本植物生理学会
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