日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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タバコ培養細胞BY-2株における蛋白質の液胞への輸送
*松岡 健
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p. S17

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抄録
 我々は、タバコ培養細胞BY-2株をモデルとして用いて、蛋白質の液胞への輸送機構を解析している。対数増殖期のBY-2細胞には、液胞への蛋白質輸送機構として、シグナルに依存した少なくとも2種の輸送機構が存在する。そこで、定常期の細胞においてこれら以外の液胞への輸送系が存在するかを、蛍光蛋白質を用いて検討した。BY-2で発現させた液胞輸送シグナル破壊スポラミン前駆体N-末端側41アミノ酸残基とGFPの融合蛋白質は、対数増殖期においては細胞外へ分泌されたが、定常期には多く細胞の液胞内にGFPの蛍光が観察された。また、小胞体膜タンパク質であるCyt b5とRFPの融合蛋白質(Cyt b5-RFP)を発現させた場合に、対数増殖期の細胞においてRFPの蛍光は細胞内に点状の構造体として観察され、定常期には一部の蛍光が液胞内に観察されるようになった。そこで、定常期において細胞分裂が停止する要因の一つである栄養飢餓において、これらの液胞への輸送が誘導されるかを検討し、Cyt b5-RFPの場合においてのみ液胞へ蛍光が観察されることを見い出した。このことは定常期においては、少なくとも2種の液胞への蛋白質輸送機構が新たに誘導されることを示唆している。現在、細胞飢餓による液胞への蛋白質移行について解析を進めており、この移行機構発現に至るまでの細胞飢餓情報の細胞内伝達機構に関しても議論したい。
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© 2003 日本植物生理学会
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