日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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種子貯蔵タンパク質の輸送・蓄積の分子機構
*嶋田 知生冨士 健太郎片岡 未裕希山田 健志近藤 真紀西村 幹夫西村 いくこ
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p. S16

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抄録
種子細胞に見られる特殊化した液胞であるプロテインボディには大量の貯蔵タンパク質が蓄えられている.これらのタンパク質は種子の登熟期に小胞体で前駆体として合成され,液胞に輸送された後にプロセシングを受けて成熟型になり蓄積する.私達は貯蔵タンパク質の細胞内輸送及び液胞内プロセシング機構について解析を進めてきた.登熟カボチャ子葉を用いた実験から貯蔵タンパク質の新規の細胞内輸送ルートが明かとなった.このルートは小胞体から直接形成されるPAC小胞と名付けたコンパートメントを経由するもので,短期間に大量の貯蔵タンパク質を効率よく液胞に輸送するために植物が獲得してきたシステムと考えられる.単離したPAC小胞のプロテオーム解析から,貯蔵タンパク質にアフィニティのある選別輸送レセプターPV72を同定した.PV72はゴルジ体を通過した貯蔵タンパク質の液胞への選別に関わると考えられる.PV72のシロイヌナズナホモログであるAtVSR1(AtELP)の遺伝子破壊株では大量の貯蔵タンパク質が細胞外に分泌されているのが観察された.しかし,この変異体の細胞内には正しく輸送された貯蔵タンパク質を含むプロテインボディも存在していた.このことから貯蔵タンパク質の細胞内輸送にはAtVSR1依存的と非依存的な2つの輸送機構が考えられる.現在,貯蔵タンパク質の生合成過程に関わる遺伝子群を明らかにするために,シロイヌナズナ変異体の同定及び解析を進めている.
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© 2003 日本植物生理学会
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