PLANT MORPHOLOGY
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特集 I「ピレノイド:植物の相分離オルガネラのカッティング・エッジ」
二次葉緑体ピレノイドに付帯する構造についての考察
田中 厚子
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2023 年 35 巻 1 号 p. 23-28

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抄録

ピレノイドは膜を持たないオルガネラproteinaceous membraneless organelleの一つで,Rubiscoを主成分とする葉緑体内の顆粒状構造である.水圏に生息する酸素発生型光合成生物の多くがピレノイドを持ち,無機炭素濃縮機構を担うとされる.液滴に近いと考えられているピレノイドは単純で球形に近い形態が多いが,それに付帯する構造を発達させることで多様な形態を表し,属や種の分類形質としても用いられることもある.ピレノイドの付帯構造とは,ピレノイド内部に入り込むチラコイド膜やピレノイド周縁構造,ピレノイドを包むように細胞質中に存在する袋状の膜構造などであり,これらは分類群を超えて共有される形質であることが分かっている.そこで本稿では,水圏の一次生産を支える不等毛植物門のピレノイドを形態学的な視点で概観し,その形態的特徴に基づいて整理することで,ピレノイド付帯構造の共通性や役割ついての考察を試みた.収斂進化とされるピレノイドと同様に,付帯する構造も複数の系統で散発的に発生し収斂進化したことが示唆されると共に,ピレノイド内部のチラコイド膜やピレノイド周縁の構造がRubiscoのカルボキシラーゼ作用の効率化に寄与している可能性もあると考えられた.

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© 2023 日本植物形態学会
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