抄録
高等植物の核ゲノムは葉緑体の光合成装置や、葉緑体の遺伝子発現の制御を行う多くのタンパク質をコードしている。また、核ゲノムにコードされるタンパク質が葉緑体の分化や分裂の制御も行っていると考えられる。
葉緑体の形態形成機構に関与すると考えられる遺伝子はARCやFtsZなどが報告されているが、それらだけでは形態制御過程・分裂過程の一部しか説明できないので、まだ多くの未知の遺伝子が葉緑体の形態形成に関与していると考えられる。
Arabidopsis tharianaの野生株Colの葉緑体は、大きさも形態もほぼ均一な円盤型をしているのに対し、EMS処理で得られた系統5-45変異株では、葉緑体の大きさが不均一になっていた。野生株のものの数倍まで大きく膨張したようなものや、逆に数分の一に縮小したものが観察され、形状も円盤型でないものが観察された。また、出芽中の酵母のようなくびれを持つ葉緑体も観察された。
5-45変異株の原因遺伝子をマッピングした結果、第五染色体の上腕、8044kb~8301kbの間に位置することが分かった。また、arc11 (accumulation and replication of chloroplasts)は葉緑体の数と形態異常を持つ系統であることが報告されているが、5-45変異株はarc11を相補しなかったので、これらは同じ遺伝子座に変異を持つ、異なるalleleであることが明らかになった。
本発表では5-45変異株とarc11の原因遺伝子について解析したので報告する。