日本農村医学会雑誌
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原著
当院での癒着胎盤35症例の検討
谷田部 菜月北野 理絵鍔田 芙実子金子 志保武内 史緒寺本 有里松岡 竜也市川 麻以子遠藤 誠一坂本 雅恵島袋 剛二
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2023 年 72 巻 1 号 p. 1-10

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抄録
【緒言】癒着胎盤は産科危機的出血を来しうる疾患である。管理方法は統一されておらず症例に応じた対応が必要である。今回,当院での癒着胎盤症例について検討した。
【方法】2014年1月から2021年11月までに当院で経験した癒着胎盤35症例を後方視的に検討した。
【結果】分娩時の母体年齢は中央値37歳(21~43歳)であり,8例が体外受精による妊娠であった。15例が前置胎盤と診断されており,12例に帝王切開の既往,1例に癒着胎盤の既往があった(重複あり)。分娩時期は中央値36週(26~41週)であり,分娩方法は20例が帝王切開術,15例が経腟分娩であった。出血量は中央値2,970mL(300~14,727mL)であった。35例のうち9例は用手剥離にて胎盤を娩出したが,うち1例で再出血のため単純子宮全摘術を施行した。11例で妊娠子宮摘出術,2例で子宮内容除去術を行なった。また,13例で保存療法を行なったが,うち3例で出血や感染を併発し,それぞれ子宮内容除去術,胎盤核出術,子宮全摘術を施行した。
【考察】分娩前に癒着の程度が強いと予想された4例は妊娠子宮摘出術を施行し,再出血を認めた1例を除いて出血量を抑えることができた。また,胎盤の一部が残存した13例に保存療法を施行し,10例で胎盤が自然に娩出され,12例で子宮を温存することができた。
【結論】分娩前から癒着の程度が強いと予想される症例において,分娩時に胎盤が剥離されない場合は妊娠子宮摘出術が検討される。また,一部の胎盤のみ残存する症例では保存療法が良い適応となるが,経過観察中に出血や感染が増悪した場合は子宮全摘術などの外科的介入を検討する必要があり,患者にもその旨を説明しておく必要がある。
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