抄録
光エネルギーを利用してプラストシアニンもしくはシトクロムcを酸化し、フェレドキシンを還元する光化学系Iは100以上のコファクターと10以上のサブユニットを含む複合体を形成している。光化学系I複合体の機能と構成タンパク質の遺伝子解析、三次元立体構造の解析は大きく進展した。しかし、光化学系I複合体が分子集合する機構はほとんど明らかにされていない。緑藻Chlamydomonas reinhardtiiで光化学系I複合体の分子集合に必須な葉緑体にコードされるタンパクYcf4は、700kDa以上の大きさの複合体の成分である。昨年の植物生理学会では、Ycf4にTAP (Tandem Affinity Purification)タグを融合したクラミドモナスのチラコイド膜をドデシルマルトシドで可溶化し、ショ糖密度勾配超遠心、イオン交換カラム、そしてアフィニティーカラムでYcf4を含む複合体を精製した。本報告ではNaBr処理し表在性のタンパク質を除去したチラコイド膜を可溶化し、そのままアフィニティーカラムで複合体を精製した。このように精製操作を大幅に単純化しながら、これまで以上に高純度かつ大量の標品を精製する方法を確立できた。得られた複合体は60、32、28、20、16 kDaのポリペプチドを含み、このうち28と20 kDaのポリペプチドはYcf4とPsaFであった。他のポリペプチドのN末端アミノ酸配列は現在解析中である。