抄録
フィトクロムは赤/遠赤色光の光受容体であり、フィトクロムB (phyB)を欠損する変異体では胚軸の徒長、花成の早期化などの表現型が見られる。我々は組織ごとのphyBの働きを明らかにするためにシロイヌナズナのphyB欠損株において組織特異的にphyB-GFP融合タンパク質を発現する系統(PBT系統)を多数作出した(中村賢志 他、第41回植物生理学会)。
PBT系統の花成時期を連続白色光下で調べた結果、子葉葉肉細胞でphyB-GFPを発現する系統では花成遅延が認められたが、維管束や他の組織でphyB-GFPを発現する系統では早咲き表現型の回復が見られなかった。phyB変異体では花成を正の方向に制御するFT遺伝子の発現が上昇することが知られている。(Pablo et al., 2003)。そこで、PBT系統でFT遺伝子の発現を器官ごとに調べた。芽生えを、子葉、茎頂部、胚軸と根の両方を含む部分に切り分け発現解析を行った結果、子葉葉肉細胞phyB-GFPは子葉におけるFT遺伝子の発現を抑制している事がわかった。ここで、FT遺伝子は主に維管束で発現することが知られている。(Takada et al., 2003)。そこで、葉肉細胞phyB-GFPにより子葉のどの組織でFT遺伝子の発現が抑制絵師されるのかを明らかにするため、LCM法やプロトプラストを用いた組織ごとの発現解析を試みている。