抄録
私達は高等植物のDNA複製・修復のメカニズムを明らかにするために研究を進めてきた。本研究ではORC(origin recognition complex)と呼ばれる因子に注目した。ORCは複製開始の際に複製開始点を認識し結合する蛋白質複合体である。動物や酵母などでは6つのサブユニットから構成されていることが報告されている。今回、イネから高等植物のORC1~ORC5のサブユニットのcDNAクローニングを行った。すべてのOsORC subunitsで northern blotting解析により発現パターンを解析したところ、茎頂や根端の分裂組織や葉原基など細胞増殖の盛んな組織で発現していた。OsORC subunitsはDNA複製に必須の因子であるため、細胞増殖と関連して発現する事が期待される。そこで、イネの培養細胞を用いたOsORC subunits発現解析を行った。その結果、OsORC1,OsORC3,OsORC4とOsORC5の発現は細胞増殖と密接に関連していることが示唆された。興味深いことに、OsORC2は細胞増殖に関係なく恒常的に発現していた。OsORC2は他のOsORC subunitsとは異なる機能を持っているのかもしれない。