抄録
概日リズムは約24時間周期の生命活動の変動で、個体における時間生成機構としてバクテリアから植物、ヒトに至るまで普遍的に保存されている制御機構である。Myb様の転写因子をコードするLATE ELONGATED HYPOCOTYL(LHY)とCIRCADIAN CLOCK ASSOCIATED 1 (CCA1)は、シロイヌナズナの概日リズム制御系において中心的役割を果たしている。LHYを過剰発現する突然変異体lhy-1は長日条件下での花成遅延と胚軸伸長形質を持つ。我々は、lhy-1を親株として新たに変異を導入し、3つのLHY機能欠損変異体(lhy-11, 12, 13)を単離し、これらの花成期間が短日条件下で野生型よりも短くなることを明らかにしてきた。今回我々は、lhy-12の形質を抑制する突然変異体として新規lhyアリル(lhy-2)を単離した。lhy-2は長日条件下での花成遅延と胚軸伸長形質を持つ点でlhy-1と類似している。lhy-12ではLHY遺伝子の第5イントロンの末端部に一塩基置換が見られ、この変異によりLHYのスプライシング異常が引き起こされることを見出した。このLHYのスプライシング異常は、lhy-2で部分的に抑制されている可能性が考えられた。LHY遺伝子のスプライシング異常の程度と、その花成及び胚軸伸長への効果について報告する。