抄録
恒常暗期条件下のイネ(Oryza sativa L.)の葉身・葉鞘RNAを用いたイネcDNAマイクロアレイ解析から、光のない条件下においても転写量が約24時間周期で変動する遺伝子を同定した。同定した遺伝子の中から3つの遺伝子を選び、転写量が明暗条件下、恒常明期条件下においても日周変動することを確認した。これらの遺伝子の役割について調べるために、cDNAを植物の大量発現用プロモーターの下流にセンス方向(S)もしくはアンチセンス方向(AS)につないだ形質転換イネを作出した。今回は類似性検索により植物の転写因子であるDofと有意な類似性がみられた遺伝子(Dof様遺伝子)の発現解析の結果について報告する。Dof様遺伝子はS、AS両形質転換イネともに転写量の大幅な増加もしくは減少はみられなかったが、器官ごとの転写量はSイネとASイネの間で違いがみられた。転写量を内在性遺伝子と外来遺伝子に区別して調べたところ、内在性遺伝子の器官ごとの転写量が変化していることがわかった。また、外来遺伝子の器官ごとの転写量も内在性遺伝子の転写量と似た変化を示した。転写量の日周変動パターンを調べたところ、転写量が最大値を示す時間はSイネ、ASイネともに親系統イネと同様であったが、最大値を示す時間の前後の時間における転写量がわずかに増加していることがわかった。形質転換イネにおける既知の概日リズム制御下遺伝子の発現解析の結果から、Dof様遺伝子との関連について考察する。