抄録
シロイヌナズナの遺伝子 FD は、花成経路統合遺伝子 FT と協調して花成を促進することを、われわれはこれまでに報告している。FD は bZIP 蛋白質をコードしており、転写因子として働くことが予想されるので、その標的遺伝子の候補である花芽分裂組織遺伝子の発現解析を行った。その結果、35S::FD 植物の芽生えでは、AP1, CAL, FUL の発現が上昇しており、fd-1; lfy-26 の花序では AP1, CAL, FUL の発現が減少していた。1.7 kb の AP1 プロモータを持つ AP1::GUS 植物の 10 日目の芽生えでは、GUS の発現が認められないのに対して、35S::FD を導入した植物では、子葉や本葉の維管束を中心に、GUS が発現していた。 発現部位が一様ではないことより、FD 以外の因子が必要であると考えられたが、そのパターンより FT の関与が示唆された。 ft-3 背景の 35S::FD 植物における AP1 の発現を調べたところ、ft-3 背景では、AP1 の発現はほとんど認められなかった。酵母細胞内で、FDは FT と蛋白質間相互作用する。これらの結果より、AP1 の発現には、FD の過剰発現だけでは十分ではなく、FT の存在が必要であること、すなわち、FD は FT と相互作用することにより、AP1 の発現を活性化し、花芽形成を促進すると考えられる。