日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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細胞質置換コムギ系統で誘発する pistillody(雄ずいの雌ずい化)には花器官決定遺伝子の発現パターンの変化が関与する
*村井 耕二平林 千鶴濱 絵里子宅見 薫雄荻原 保成石川 元一平野 博之
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p. 185

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抄録
近縁野生種 Aegilops crassa 細胞質は、「農林26号」などいくつかの日本コムギ品種に、雄ずいの雌ずい化(pistillody)による雄性不稔を誘発する。一方、コムギ品種「Chinese Spring」(CS)の7B染色体長腕(7BL)には、この pistillody を抑制する優性の主働遺伝子Rfd1が存在し、Ae. crassa 細胞質を導入しても pistillody は起こらない。このRfd1遺伝子が座乗する7BLを両方欠失したダイテロソミック7BS系統では、正常細胞質の場合(CSdt7BS系統)、正常な雄ずいを持つが、Ae. crassa 細胞質を導入した場合((cr)-CSdt7BS系統)、完全に pistillody となる。雌ずいおよび雄ずいが分化する頴花分化期の幼穂において、クラスB MADSボックス遺伝子の発現を調べたところ、CSdt7BS系統の雄ずい原基では正常に発現が見られるが、pistillody を誘発する(cr)-CSdt7BS系統の雄ずい原基では発現が見られなかった。一方、雌ずいの identity を決定するYABBY遺伝子TaDLが、(cr)-CSdt7BS系統の雌ずい化した雄ずい原基で発現していた。このことは、Ae. crassa 細胞質による pistillody 誘発に、花器官決定遺伝子の発現パターンの変化が関係することを示す。
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© 2004 日本植物生理学会
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