抄録
表在性33 kDa蛋白は全ての酸素発生型のPSIIに存在し、Mnクラスターの安定化と機能保持に重要な役割をもつ蛋白で、PSII膜蛋白に静電的結合と水素結合により比較的緩く結合している。我々はすでに、蛋白表面の電荷を消去する化学修飾法を用いて33 kDa蛋白のPSII膜蛋白への結合には正電荷が重要であることを報告し、ホウレンソウおよび紅藻の33 kDa蛋白に共通して6つのドメイン内に存在するリジン残基がPSII膜蛋白との静電的結合に関与していると推定した。本研究では、これらの6つのドメイン内に存在するリジン残基の中でどのリジン残基がPSII膜蛋白との静電的結合に直接関与しているか同定するため、紅藻の33 kDa蛋白の部位特異的変異による解析を試みた。その結果15番目と164番目のリジンをグリシンに置換した33 kDa蛋白は機能的にはPSII膜蛋白に結合できないことが明らかになった。一方、198番目のリジンをグリシンに置換した33 kDa蛋白は機能的に結合した。また、74番目のリジンをグリシンに置換したものでは、結合による酸素発生の活性化はnativeなものの2/3に抑えられた。他の部位特異的変異した33 kDa蛋白の結果とも合わせ、33 kDa蛋白のどのリジン残基がPSII膜蛋白との静電的結合に直接関与しているか討論する予定である。