日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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光合成酸素発生反応におけるS状態遷移のpH依存性
*鈴木 博行杉浦 美羽野口 巧
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p. 218

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抄録
光化学系II蛋白質複合体中の酸素発生Mnクラスターにおいて、二分子の水は4つのプロトンと1分子の酸素に分解される。この水分解反応はS状態と呼ばれる中間状態(S0-S4)の光駆動サイクル(S状態サイクル)によって行われることが知られているが、その反応の分子機構は、未だほとんど不明である。本研究では、閃光誘起フーリエ変換赤外(FTIR)差スペクトル法を用いて、S状態サイクルにおける各中間状態遷移のpH依存性を調べ、水分解反応におけるプロトン放出過程について調べた。
好熱ラン藻Thermosynechococcus elongatusから調製した光化学系IIコア蛋白質に、4回閃光照射を行い、それぞれの閃光によるS1→S2, S2→S3, S3→S0, S0→S1遷移の際のFTIR差スペクトルを測定した。この測定をpH4.0-10.0の範囲の緩衝液を用いて行った。各pHでの閃光誘起差スペクトルを、pH6.0における標準スペクトルを用いてフィッティングすることによって、各S状態遷移の効率を求めた。その結果、S2→S3、S3→S0、S0→S1遷移の効率は、低pH側(4.0 < pH < 5.5)で減少し、高pH側(7.0 < pH < 9.0)では、ほとんど変化しない傾向が見られた。このことから、水分解の過程において、S2→S3、S3→S0、S0→S1遷移でプロトンが放出されている可能性が示唆された。
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© 2004 日本植物生理学会
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