日本助産学会誌
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原著
授乳期の乳腺炎診断アセスメントツールの開発
—信頼性と妥当性の検討—
長田 知恵子
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2012 年 26 巻 2 号 p. 179-189

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抄録

目 的
 本研究の目的は,「授乳期の乳腺炎診断アセスメントツール」を開発し,その信頼性と妥当性を検討することである。
方 法
 本研究の「授乳期の乳腺炎診断アセスメントツール(ATLM)」は,既存研究(長田,2010)と文献検討を基盤とし,母乳育児支援の専門家による内容妥当性を検討した後,予備的な研究を行った。その結果を基に,本研究では検討項目を16として調査を実施した。本研究の調査対象は,乳腺炎以外の乳房疾患既往者は除外とし,乳汁生成Ⅲ期(産後9日目以降母乳育児終了まで)の母子277組,乳房数554とした。調査は,母乳育児相談室等の計4ヵ所で,2010年4月~11月に調査を行った。調査内容は,調査協力施設に来院した母子に質問紙への記載と体温測定を依頼した。担当助産師には,通常ケア後,開発中のATLMとLATCH(LATCH assessment tool)への記載を依頼した。対象の母親には,さらに,調査1週間以降に,その後の状態を問う質問紙への回答を依頼した。本研究は,大学の倫理審査で承認後に行った。
結 果
 主因子法,プロマックス回転の結果,ツールは12項目3因子であり,各因子は【乳汁のうっ滞を観るポイント】【乳汁の産生を観るポイント】【子どもによる乳汁の排出を観るポイント】と命名した。併存妥当性としてLATCHとの相関はr=-0.525であり,医療介入についての予測的中度は96.9%であったことから基準関連妥当性が確認できた。またツール全体のα係数は0.820で(下位因子:0.859,0.803,0.818),評定者間一致は0.490~0.852で概ね確認できた。ツール合計得点における医療介入のカットオフポイントは32で,感度98.0%特異度87.5%となった。このうち,第2因子より第1因子が高値であること,第1因子の合計得点が11以上であることも必須要件とした。
結 論
 本研究のツールは,妥当性および信頼性について確認できた。今後,臨床において,新人あるいは若手助産師の教育教材および母乳育児支援の際の判断基準の1つとしての貢献が可能である。

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© 2012 日本助産学会
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