日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シアノバクテリアにおけるイネデンプン合成代謝酵素の発現
*鈴木 英治吉野 友博高橋 純一郎中村 保典
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p. 294

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抄録
植物のデンプン合成は、デンプン合成酵素、枝作り酵素(BE)、枝切り酵素のそれぞれ複数のアイソザイムが関与する複雑なシステムである。これら個々の酵素の機能を明らかにするため、私達はより簡素なポリグルカン代謝系を持つシアノバクテリア Synechococcus sp. PCC 7942 を宿主としたイネ遺伝子発現系の構築を行っている。イネ胚乳において、BEIIb、およびイソアミラーゼ-1(ISA-1)の欠損はアミロペクチンの構造、物性に顕著な影響をもたらす。本研究では、これらの遺伝子をそれぞれ Synechococcus の BE、ISA 変異株に導入し、貯蔵ポリグルカンの構造に及ぼす効果を解析した。
シアノバクテリア形質転換株からアルコール抽出した多糖についてα-1,6-結合切断後、キャピラリー電気泳動法により分画を行った。BE 欠損株では野生株に比べ重合度 DP ≥ 10 のグルカン鎖が増加したが、これにイネ BEIIb を導入した株では DP 7 - 8 の鎖が減少し、代わって短鎖(DP = 5)の割合が増大した。ISA 欠損株では短鎖(DP 2 - 3)の含量が増大したが、これにイネ ISA-1 を導入した株ではこの短鎖の割合が低下することが認められた。短鎖が減少する点で ISA-1 形質転換株の多糖構造は Synechocystis sp. PCC 6803 株の ISA 遺伝子(slr0237 および slr1857)を導入した形質転換株のものと類似していた。シアノバクテリア生体内でグリコーゲンを基質とした際のイネ酵素の作用について議論する。
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© 2004 日本植物生理学会
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