抄録
Nudix hydrolaseは、(d)NTP、NADH、 ADP-riboseのようなヌクレオシド二リン酸誘導体(Nudix)を加水分解するタンパク質である。我々はラン藻Synechococcus sp. PCC 7002から新規なNudix hydrolaseをコードするnuhA遺伝子をクローニングし、NuhAがADP-riboseを特異的に加水分解すること、さらにnuhA遺伝子の破壊株が細胞凝集の表現型を示すことを昨年の本大会で報告した。
NuhAはN末端側に触媒に必要なNudix domain、C末端側に機能未知のPfamB-3375 domainをもつ。PfamB-3375 domainをトランケートした変異タンパク質を作製した結果、ADP-riboseの加水分解に対する変異タンパク質のKm値はNuhAに比べて約7倍増加していた。また、NuhAは六量体を形成するが、変異タンパク質は二量体を形成していた。したがって、このdomainが基質の結合と多量体形成に関与していることがわかった。
nuhA破壊株は低CO2条件下では凝集しながら生育した。同じ条件で野生株にADP-riboseを加えると細胞が凝集したことから、ADP-riboseの蓄積が細胞の凝集を引き起こしていると考えられる。一方、高CO2条件下ではnuhA破壊株は細胞が凝集せず正常に生育した。したがって、CO2の十分な供給によりADP-riboseの有害な影響が緩和されていることが示唆される。