抄録
シロイヌナズナNADPH:2-アルケナールα,β-ヒドロゲナーゼ(ALH)は,過酸化脂質から生ずる2-アルケナール(活性アルデヒド)を還元・消去する。ALHはすでに報告した4-ヒドロキシノネナールなどの他に,9-keto-octadecadienoic acid や変異原性の強い4-oxo nonenalなどを基質として効率よく還元することを新たに見いだした。すなわちALHは過酸化脂質由来のアルケナール,アルケノンを広く解毒する。ALH遺伝子(At5g16970)をタバコに導入し過剰発現させた株は,メチルビオローゲン存在下での光酸素傷害に耐性を示すだけでなく,非存在下でも強光照射 (2000 μmol/m2/s, 6 h) に対し抵抗性を示した。これは (i) 酸化的ストレスで生ずる活性アルデヒドの消去と,(ii) 消去のための還元力消費による過剰光エネルギーの散逸,の両方の効果によると考えられた。