抄録
植物細胞の伸長方向は表層微小管の配向により少なくとも部分的に制御される。伸長方向が右または左にずれるアラビドプシスねじれ変異株の解析により、微小管機能と細胞伸長の密接な関係が改めて示唆されてきた。
α-tubulinのN末端にヘマグルチニン(HA)やmycタグまたはGFPを付加し、CaMV35Sプロモーターで強制発現させたアラビドプシス形質転換体では導入したα-tubulinが微小管ポリマーに取り込まれ、葉柄や花弁で右巻きのねじれを示した。一方、α-tubulinのC末端にmycを付加した系統やβ-tubulinのN末端にGFPを付加した系統では導入したtubulinは微小管ポリマーに取り込まれるが、ねじれ形質を示さなかった。我々は、α-tubulinのN末にペプチドを付加することによりα-tubulinのもつβ-tubulin GTPase活性が阻害され、長いGTPキャップを持つ安定な微小管を形成し、伸長細胞に右巻きねじれを引き起こしたと推測した。この仮説の検証するため、GTPase促進活性に重要なアミノ酸を変異させたα-tubulinを強制発現させた形質転換体を作製したところ、葉柄と花弁において右巻きのねじれを示し、トライコームの分岐数が増大していた。