日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナ培養細胞の凍結耐性増大カイネッティクスの解析
*佐々木 裕吉田 理一郎篠崎 一雄上村 松生
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p. 357

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抄録
植物個体における凍結耐性付与機構に関しては多くの研究があるが、その結果は非常に複雑な様相を示し、凍結耐性増大に関与する個々の要因を解剖してその貢献機構を解明することが困難な場合が多々ある。そこで、我々はシロイヌナズナT87縣濁培養細胞を用いて低温馴化過程における凍結耐性付与機構を明らかにし、植物個体と培養細胞間の耐性付与機構や遺伝子発現様式の違いを解析することを目的に研究を開始した。異なった成長段階(誘導期、対数期、定常期)におけるT87懸濁培養細胞の凍結耐性を測定したところ、誘導期の細胞で低温馴化2日処理した時に最大凍結耐性が得られ、より長い低温馴化では凍結耐性増大が見られない事が明らかになった。その時の低温誘導性遺伝子(DREB1ARD29ACOR15a)は、低温馴化6~24時間で発現が誘導された後、急速に発現量が減少していた。一方、培地中のショ糖含量を増加させて低温馴化を行ったところ、低温馴化による凍結耐性の増大が長い期間持続されることを見いだした。この時の低温誘導性遺伝子発現、細胞内外の浸透濃度や糖含量の変動を現在解析している。これらの結果は、植物個体と比較して培養細胞の低温馴化による凍結耐性変動パターンが異なっていること、培地中の糖含量によって低温馴化カイネッティクスが影響を受けることを示しており、今後、遺伝子発現プロファイルを比較し、低温馴化に関わる要因の解析を進めていく予定である。
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© 2004 日本植物生理学会
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