抄録
水分屈性における水分濃度勾配の感知や情報伝達に関する分子機構は未だ解明されていない。そこで分子レベルでの水分屈性機構の解明を目的として、当研究室で開発したシロイヌナズナの水分屈性検定法を用いて、屈水性の低下した変異体の選抜を行った。その結果、4860系統のT-DNA挿入種子から、重力屈性は正常で、水分屈性にのみ異常を示す変異体7系統を単離した。得られた変異体の中から、本研究ではcs2448について詳細な解析を行ったので報告する。
cs2448は野生型に比べ有意に根が長く、また接触刺激によるとされる波形成長を調べたところ、根がコイル状になることが判明した。顕微鏡観察では両者間に根の形態的相違は認められなかった。
また、TAIL-PCR法を用いてT-DNAが挿入している遺伝子を解析した結果、AKT2遺伝子が欠損していることが明らかになった。そこでAKT2遺伝子にT-DNAが挿入している3系統の種子をSALK研究所から取り寄せ、根の屈水性を検定したところ、水応答性が低いことを確認できた。これらの結果はAKT2遺伝子が水分屈性変異体の原因遺伝子であることを示唆している。興味深いことにAKT2遺伝子はK+チャンネルをコードしており、pAKT2::GUSを用いた解析から中心柱で、特に師部において強い発現が見られた。
現在、水分屈性におけるAKT2遺伝子の役割と植物ホルモンとの関連性を追究している。