抄録
ホウ素は植物にとって必須元素である。しかし、過剰量のホウ素は植物の生育を阻害することが知られている。ホウ酸過剰土壌は世界に広く分布している。それらの地域での作物の生産性を向上させるためには、植物のホウ素耐性機構の理解が重要である。
今回我々は、酵母にホウ酸耐性を付与するシロイヌナズナ遺伝子の単離を試みた。通常、酵母は80mMのホウ酸を含むSD培地上では生育できない。そこで、シロイヌナズナの発現ライブラリーを酵母に導入し、この条件下で生育してくるものを選抜した。これまでに120万コロニーの酵母をスクリーニングし、ホウ酸耐性を示す酵母を4つ取得している。これらの酵母の持つプラスミドに存在するシロイヌナズナcDNAクローンの配列を決定したところ、それらの中の1つはPoly(A)-binding protein PAB2をコードしていた。PAB2はmRNA のpoly(A)に結合し、そのmRNAの安定性、翻訳効率の調節に関わることが明らかにされている。現在、PAB2を発現させた酵母においてホウ酸耐性機構に関する解析を進めている。