抄録
地球上のすべての物質は1Gの重力を受けている。植物はそれに対し根を重力方向に、また花茎や胚軸を重力と反対方向に、伸長又は屈曲する。しかし自然界における葉の展開方向は、花茎や胚軸及び根とは異なり、重力方向に対して様々である。そもそも、葉が重力屈性を示すのかどうかは明らかとなっていない。
そこで、重力方向を変えた時の野生型シロイヌナズナのロゼット葉の動きに注目し、葉の重力屈性の有無を調べた。まず、胚軸の位置を固定し、連続光で上下逆さまの状態で育て、正常な重力方向で育てたものと比較した。その結果、ロゼット葉の向きは正常な重力方向で育てた場合と変わりがなかったことから、シロイヌナズナの葉は重力依存的ではなく、軸依存的に展開すると考えられる。一方、暗状態で重力方向を変えた時の葉の動きを調べたところ、比較的短時間で重力方向による違いが見られた。この条件では、葉は重力方向を感受していると考えられる。そこで、花茎や胚軸及び根において、特定の細胞内で重力方向に沈殿し重力情報を感受していると考えられているアミロプラストが、葉ではどの細胞にどのように存在しているのかを調べたところ、アミロプラストが葉柄基部側の葉脈付近の細胞に局在し、重力方向に沈殿していた。以上の結果をふまえて、光条件やアミロプラストの沈殿が葉の重力感受に及ぼす影響や、葉がどのように重力を感受し情報として利用しているのかについて議論する。