抄録
自然条件の下、太陽光によって作られるDNA損傷産物の量は極めて少なく、これをELISAによって検出・定量するには、ELISAの検出感度を大幅に上げることが決め手になる。我々はドイツでELISA反応の不可解な変動に遭遇し、原因検討の結果、ELISAプレートにDNAを与えるとき食塩を加えると、シクロブタン型ピリミジン二量体および(6-4)光産物の検出感度が高まることを見出した。この食塩の効果はIMMULON 4HBXプレートや同 2HBプレートでは認められたが、IMMULON 1HB やNUNC 96FSIでは認められなかった。ドイツで用いたプレートは4HBXに類するプレートであったと推定される。塩化ナトリウムの他、硝酸、クロム酸、モリブデン酸のナトリウム塩およびカリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛の塩化物は有効、しかし硝酸カリウムは無効であったので、Na+とCl-の両方が関与していると推定される。但し、例外的に臭化カリウムとヨウ化カリウムは有効、塩化リチウムは無効であった。塩による促進の度合いは、塩の濃度によって異なるが、一定の塩濃度ではDNAの投与量や損傷の度合いに係わり無く一定であるので、DNA損傷測定の感度増大に利用できる。