日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

水生植物ヒルムシロ殖芽の嫌気的成長におけるスクロースシンターゼの誘導とその役割
*原田 太郎佐藤 茂吉岡 俊人石澤 公明
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 492

詳細
抄録
 水生単子葉植物のヒルムシロ(Potamogeton distinctus A. Benn.)の殖芽は、非常に強い嫌気ストレス耐性をもっているだけでなく、空気中ではほとんど成長せず、無酸素条件下で最もよく伸びるという特異な性質を備えている。殖芽の嫌気的成長に伴い、解糖系へ糖を供給するため、貯蔵デンプンが急速に分解されることがわかった。また、スクロースのプールサイズが小さくなると同時に、その合成・分解が活性化されていることがわかった。スクロース代謝に関係する酵素のうち、特にスクロースシンターゼ(SuSy)の活性上昇が顕著であった。
 SuSyは、嫌気処理により誘導されるanaerobic proteinsの1つである。一般的に、SuSyは、スクロースを分解して解糖系へ糖を供給する役割が考えられている。一方、原形質膜に結合したSuSyは、セルロース合成に必要なグルコースの供給にも関わることがわかってきている。ヒルムシロから2つの異なるSuSy遺伝子を単離したところ、嫌気条件に対して応答するのは一方の遺伝子のみであることがわかった。このヒルムシロ殖芽の嫌気的成長に伴い誘導されるSuSyは、エネルギー生産と細胞成長の両方に関わる重要な位置にあることが考えられる。
 他方、サブトラクション法を用いて、ヒルムシロの嫌気応答性遺伝子の単離を試み始めており、これまで得られている結果についても報告する予定である。
著者関連情報
© 2004 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top