抄録
高等植物において、MGDG合成酵素(MGD)は光とサイトカイニンにより制御されていることが知られている(Yamaryo et al. PCP, 2003)。しかし、同じ光でも波長が700 nm以上の遠赤色光の場合では、遺伝子発現が誘導され、活性の増大が起こるにもかかわらず、MGDGが蓄積しない。その一方、600 nm 以上の赤色光の場合では白色光と同様な糖脂質合成がみられる。このことから、MGDG合成には600-700 nmの赤色光が必須であると考えられる。MGDが以前より活性の維持に還元剤を必要することが知られていたため、光合成由来の還元力がMGDの活性発現には必要ではないかと考えられた。そこで、大腸菌で発現させた組み換え酵素(rMGD)を用いて還元剤やチオレドキシンによる効果を調べた。TagをもつrMGDをアフィニティー精製した後、酸化剤で酵素内のSH基を酸化した。そこへ外部より還元剤を添加することで、MGD活性への直接の効果を調べた。その結果、チオレドキシンがMGD内のジスルフィド結合を効果的に還元することが判った。また、rMGDを用いて膜脂質、特にPAがMGDを顕著に活性化することを明らかにしたので、合わせて報告する。