日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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グリシンベタインは塩ストレス条件下で光阻害における光化学系IIの代謝回転の効率を向上させる
*大西 紀和村田 紀夫
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p. 527

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抄録
グリシンベタイン(ベタイン)は適合溶質(compatible solute)の一つで、様々な生物種でストレス条件に応答して細胞内に蓄積される。これまでの形質転換株を用いた解析から、ベタインが様々なストレスに対する耐性を与えることが示されてきている。codA遺伝子は、ベタイン合成酵素の一つコリンオキシダーゼをコードしており、codAを導入したラン藻Synechococcus sp. PCC7942は、コリン存在下でベタインを合成し細胞内に蓄積することにより塩と低温ストレスに対する耐性を獲得している。我々はすでにこの株を用いた解析から、塩ストレス条件下での光阻害において、ベタインは光化学系II(系II)反応中心タンパクD1の光損傷後の分解を促進し、その結果系IIの修復の効率を上昇させることを報告した。本研究では、ベタインと塩ストレスがD1タンパクの新規合成に与える影響について調べた。強光照射下で[35S]メチオニンを用いてパルスラベルを行ったところ、D1タンパクの合成は塩ストレス条件下では強く阻害されたが、ベタイン存在下ではわずかな阻害効果しか見られなかった。従ってベタインは、塩ストレス下での光阻害においてはD1の分解と合成の両者を促進し、系IIの代謝回転の効率を上昇させていると考えられる。psbA遺伝子の転写におけるベタインと塩ストレスの影響も、合わせて報告する。
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© 2004 日本植物生理学会
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