抄録
アクチノリザル植物―フランキアの共生系は,マメ科―根粒菌の共生系に比べて,共生成立から窒素固定発現に至るまでのプロセスは不明な点が多い。マメ科植物の根粒中には,レグヘモグロビンというタンパク質が特異的に多量に生成・蓄積されており,窒素固定酵素の活性発現と密接に関わっていることが知られている。アクチノリザル植物では,モクマオウやヤマモモ,ハンノキでヘモグロビンタンパク質の存在が報告されている。
本研究では,ヤシャブシ(Alnus firma)の根粒よりcDNA libraryを作製し,ミヤコグサのヘモグロビン遺伝子(LjLb3, LjNSG1)をプローブとしたプラークハイブリダイゼーション法によるスクリーニングの結果,ヘモグロビン様遺伝子を2クローン(AfNhb1, AfNhb2)単離した。推測されるアミノ酸配列はAfNhb1, AfNhb2ともに全く一致し,植物の非共生型ヘモグロビンクラスターに位置していた。両遺伝子の組織別,および様々なストレスに対する発現をRT-PCRにより解析したところ,AfNhb1は根粒で,AfNhb2は葉で高く発現しており,それぞれ異なるストレス応答を示した。現時点では,ヤシャブシに共生型に属するヘモグロビンの存在は確認されておらず,特に根粒で高く発現しているAfNhb1がフランキアとの共生に関与していると考えられる。