抄録
カサノリは、緑藻類に属し、巨大な単細胞から成る海棲の生物体である。我々は、このカサノリの液胞膜にも、高等植物と同様に二つのプロトンポンプ、V-ATPase 及び V-PPase の存在を証明し、V-ATPase, proteolipid subunit については 6 種類の cDNA (VHA-c1 - VHA-c6 ) を単離した。これらV-ATPase, proteolipid subunitアイソフォームの機能について、酵母 VMA3 あるいは VMA11 欠損並びに ade 変異を持つ株を用いて解析を行った。液胞の酸性化に伴うプリン中間代謝産物の蓄積を、蛍光顕微鏡により観察する方法を用いた。その結果、6 種類のアイソフォームはすべて Vma3p として機能し、Vma11p としては機能しないことを見い出した。各アイソフォームの N 末端領域のオリゴペプチドに対するポリクローナル抗体を作製し、それぞれ対応する発現タンパク質を特異的に認識することが明らかになった。また、カサ形成前のカサノリの粗ミクロソーム画分には、主に、VHA-c2 及び VHA-c4 が検出された。現在、各アイソフォームの局在性、細胞成長に伴うタンパク質の発現について、免疫組織学的検討を進めている。