日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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汽水産藻類シラタマモの膨圧調節と液胞内K+とNa+濃度
*岡崎 芳次
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p. 613

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抄録
汽水産シャジクモ類シラタマモ(Lamprothamnium succinctum)の節間細胞は外液の浸透圧の変化に対して細胞浸透圧を増減させて膨圧を一定に保つ(膨圧調節)機構を備えている。液胞浸透圧は主にK+、Na+、Cl-によって維持され、膨圧調節の際にはそれらの濃度が増減して液胞浸透圧が変化する。本報告では、膨圧調節の結果として増減する液胞内イオン濃度がその後の膨圧一定条件下で変化するかどうかを検討した。液胞液の無機イオン濃度は個々の節間細胞から液胞内灌流によって液胞液を直接単離し、イオンクロマトグラフ法によって測定した。
 低張処理に伴う膨圧調節の終了直後では、液胞内のNa+濃度は変化しておらず、K+とCl-濃度のみが減少していた。その後、膨圧一定下でK+濃度は増加して元のレベルまで回復する一方でNa+濃度は減少した。また、高張処理に伴う膨圧調節の間は液胞内のK+とNa+濃度がほぼ同じように増加して膨圧の回復に寄与した。そして膨圧が回復した後でもその変化したNa+とK+濃度はそのままに保たれた。以上のことは、低張処理に伴う膨圧調節では液胞K+の流出が優先するものの、その後はNa+を放出することによって膨圧を一定に保ちながら外液からK+を吸収して、液胞内の減少したK+濃度を元のレベルまで戻すイオン調節機構の存在を示唆している。
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© 2004 日本植物生理学会
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