日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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コケ植物の耐凍性獲得過程で発現する遺伝子の同定
*南 杏鶴長尾 学荒川 圭太藤川 清三竹澤 大輔
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p. 803

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抄録
コケ植物は熱帯から極地まで幅広く生育し、その中には極端な乾燥や凍結に対して耐性を持つ種が少なからず存在する。蘚類ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)の原糸体は、通常の培養条件では耐凍性を持たないが、アブシジン酸(ABA)処理によって高い耐凍性を獲得し、-80℃での凍結保存も可能になる。このことから、ABAが細胞の凍結脱水ストレス耐性に重要な役割を持つと考えられた。私たちは、ABA処理したヒメツリガネゴケ原糸体細胞において葉緑体や液胞の小型化、細胞内浸透濃度の増加および熱安定性タンパク質や可溶性糖の蓄積がおこり、凍結傷害の主要因である細胞膜の損傷が緩和されることを明らかにした。ABAで誘導される耐凍性上昇はシクロヘキシミド処理で著しく抑制されることから、この過程には核コードタンパク質の合成が必須であることが示された。
ヒメツリガネゴケの耐凍性上昇に関わる遺伝子を同定するため、フィルターアレイを用いたディファレンシャルスクリーニングによりABA処理で増加する60以上の遺伝子を単離した。その結果、これらの中にはLEAや水チャネルなどのように高等植物のストレス応答性遺伝子と相同性のあるものが多数含まれる一方、高等植物には保存されていない葉緑体タンパク質LI818や、UVI-1など原核生物遺伝子のホモログが新たに同定された。
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© 2004 日本植物生理学会
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