抄録
植物の葉の老化の早さは、植物個体が生育している場所の光、窒素供給量などの環境要因によって異なっている。また、展開中の葉や実のように活発に成長している部分(シンク)は、葉の老化の早さに影響を与える。このように窒素や炭素のような資源が、個体にどれだけ取り込まれ、成長に利用されていくのかということは、葉の老化を考えるうえで重要である。強光低窒素になると葉に光合成産物の蓄積が見られ、このような条件では葉の老化が早くなる。一方、強光低温になると、光が過剰になり光ストレスによって、葉の老化が早くなると考えられる。ある一定の生育光が葉の老化に与える影響を考えるときに、生育温度や窒素供給量とのバランスを考慮する必要がある。 今回の実験では、北方林を構成する樹種で、一斉展葉を行うミズナラ(Quercus crispula)を用いた。 2段階の生育温度(25℃、15℃)および2段階の生育光(100μmol m-2 s-1、700μmol m-2 s-1)を組み合わせた条件で種子から生育させ、老化の指標として、光合成活性や窒素量を、また、光ストレスの指標として最大量子収率および活性酸素消去系の酵素活性の測定を行い、同時に個体の乾燥重量の変化を調べた。個体の成長や光ストレスが、葉の老化にどのように影響を与えているのか調べた結果を報告したい。