日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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当年生ミズナラ実生の光ストレスに対する適応
*津田 元小野 清美原 登志彦
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p. 642

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抄録
 植物は生育するために光を必要とするが、過剰な光は光合成の低下や、延いては色素の破壊などを引き起こす。この原因となるのは、光合成や熱放散などの光防御で消費できなかった過剰エネルギーであると考えられている。
 ミズナラ(Quercus crispula)は北方林の主要構成種で、極相を形成する落葉樹である。林冠にギャップができるまでは林床の弱光条件下に適応して低木のまま成育し、ギャップができ日光が十分に得られる環境になると林冠まで成長する。このため、ミズナラは生育過程で劇的な光環境の変化を短時間で体験することになる。急激な強光の照射に対しては、Water-Water cycleやキサントフィルサイクルによる熱放散が過剰エネルギーの消去に機能していると考えられるが、ミズナラにおいてはいまだに明らかにされていない。また、北方林で生育するため展葉から落葉までの期間において、日中でも10℃以下の低温にさらされる可能性がある。
 今回の実験では、当年生ミズナラ実生を人工気象器内で2段階の光強度(700μE、100μE)と2段階の温度(25℃、10℃)の組み合わせで生育させ、展葉から落葉までの光合成速度、過剰エネルギー量、カロチノイド含量、t-APXとs-APXの活性の変化を測定し、ミズナラ実生が強光かつ低温という過酷な環境下にどのように適応しているのかについて調べた結果を報告する。
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© 2004 日本植物生理学会
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