日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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トダシバの様々な緑色組織における光合成細胞の分化とC3,C4酵素の発現
*若山 正隆上野 修大西 純一
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p. 648

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抄録
 イネ科のC4植物トダシバの葉身では、葉肉細胞(MC)と、通常のクランツ細胞である維管束鞘細胞(BSC)に加えて、葉肉組織の中に孤立したクランツ細胞としてdistinctive cell(DC)と呼ばれる光合成細胞が存在する。本研究では葉身以外の緑色組織にもDCが分化しているのか、またそれらの組織でC3,C4酵素がどのように発現しているのかを検討した。
 葉鞘、稈、小穂軸の緑色組織でも葉身のように3種の光合成細胞が分化しており、DCの形態は1細胞のみが孤立したものから、複数のDCが集合したものまで多様であった。成熟したこれらの組織ではPEPCはMCの細胞質に、RubiscoはBSCとDCの葉緑体に、PPDKは主にMCの葉緑体に蓄積していた。しかし葉身に比べこれらの組織では各酵素の蓄積量が低かった。葉鞘、小穂軸ではBSCまたはDCから2層以上離れたMCが存在していたが、MC各層での光合成酵素の蓄積や葉緑体の構造には差がなかった。一方、直接光を受けない発達中の葉鞘の基部では、BSCだけでなくMCにもRubiscoが蓄積しており、MCのRubiscoは葉鞘の上部に向かうとともに減少し、反対にMCにおけるC4酵素の蓄積が起こり始めた。以上から、発達中の若い葉鞘組織はC3的な酵素発現パターンを示し、分化初期からRubiscoがBSCとDCに特異的に発現する葉身の場合と異なることが明らかになった。
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© 2004 日本植物生理学会
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