抄録
バクテリア核様体の主要タンパク質であるHU類似タンパク質をコードする遺伝子が、クリプト藻Guillardia thetaや原始紅藻Cyanidioschyzon merolaeでは葉緑体ゲノムで見つかっているが、シロイヌナズナには類似遺伝子は存在しない。しかし、C. reinhardtiiのESTデータベースからHU類似タンパク質をコードすると思われる配列が見つかったため、C. reinhardtiiには、核コードのHU類似タンパク質が存在すると予想された。
本研究では、EST配列をプローブとして用いたDNAブロット分析により、単一の遺伝子であることが明らかになった。またこのEST配列をゲノムデータベースで検索した結果、イントロンが3つあることがわかった。同様のプローブを用いたRNAブロット分析により初期、中期、終期の対数増殖期、特に終期では、良く発現しているのに対し、定常期での発現量は対数増殖期に比べて低いことが明らかになった。次に、このHU類似タンパク質を大腸菌で大量発現させたタンパク質を用いて、ゲルシフト実験を行った結果、一本鎖DNA、二本鎖DNA、RNAともによく結合し、大腸菌のHUタンパク質のような特異性がないことがわかった。また、このタンパク質はN末端の延長配列の特徴からミトコンドリアに輸送される可能性が示唆されたため、すでに作成したこのタンパク質の抗体を用いて、免疫ブロット分析を行うとともに、GFPとの融合タンパク質を作成しての細胞内局在の観察を今後予定している。