抄録
多細胞生物にとって細胞間接着は、形態形成の調節を行う上で非常に重要な要素のひとつである。半数体タバコの葉切片に対しT-DNAの導入による変異誘導を行うことで、細胞接着性に変化が見られ、器官分化能力を失った細胞接着変異株nolac(non-organogenic callus with loosely attached cells)のひとつであるnolac-K4を得た。この変異株からTAIL-PCRを用いてT-DNAにタグされた遺伝子を単離したところ、3種の異なるT-DNA近傍配列が得られた。そこで相同性検索等により変異の原因遺伝子の候補(L445)を絞り込んだ。その結果、L445はタンパク質間相互作用の受容体様ドメインであるLRR(leucine-rich repeat)とEXTENSINドメインをもつキメラ遺伝子であることが分かった。このL445は主に根、葉などで発現が強く、花でも発現していた。また、pL445::GUS導入タバコでは若葉の葉柄の維管束、葉脈及び、根端、側根原基で強く発現していた。さらに、LRRドメインのみを過剰発現させたBY-2培養細胞では、約40%の細胞に細胞が肥大するなどの形態や分裂の異常が見られた。