抄録
タバコ細胞壁に局在するpurple acid phosphatase(NtPAP)をコードする4種類のcDNAクローンのうち、プロトプラストの細胞壁再生過程における発現解析を行なったところ、細胞壁再生に伴い、NtPAP12のmRNAレベルの速やかな増加が認められた。そこで、NtPAP12をタバコ細胞に導入し、NtPAP12を過剰発現する形質転換タバコ細胞を作出した。形質転換プロトプラストの細胞壁再生過程は、プロトプラスト表面全体がβ-グルカンで覆われる再生120分までカルコフルオア染色により観察された。その結果、野生株と比較してβ-グルカンの蓄積の促進が認められ、再生60分後には野生株のほぼ2倍量に増加した。本研究では、培養7日目のタバコXD-6細胞の野生株と形質転換体のプロトプラストの細胞壁再生初期(再生60分まで)の細胞壁画分からNaClによってNtPAPを溶出し、細胞壁画分のNtPAP蓄積量の定量化を試みた。その結果、形質転換体でのNtPAPの細胞壁への蓄積の増加量は野生株に比較して再生60分後に約2倍であった。なお、プロトプラストの細胞壁再生60分後の細胞壁からNtPAPを溶出するための濃度は、培養7日目細胞の細胞壁から溶出するための濃度の約1/2であった。