抄録
植物中の水は生長や物質輸送に直接関わっており、その動態を調べることは生命活動を理解する上で極めて重要である。水輸送において木部組織(特に導管)はこれまで受動的な水や無機イオンの通導組織と考えられてきた。しかしながら、最近になって、それら木部組織が、そこを経由する物質流を積極的に制御している可能性があるとの見解も報告されるようになった。そうしたことから、自然に活動している状態の植物中の水動態を直接計測する方法の確立が望まれてきた。本研究では、標識水の[15O]waterとポジトロン検出装置を併用することにより、非侵襲で植物茎中の水の流れをリアルタイムで定量的に計測する系を確立した。そして、その系を用い、播種後3weekのダイズ茎中1cmの水の動態を調べたところ、計測部位では導管より約20nl/sの水漏出が生じていることが分かった。この量は、茎から蒸散により失われる水を補える量であり、植物の水収支を考える上で無視できない量である。さらに、それら導管から漏出する流量は、蒸散流速度に依存することが示唆された。現在、導管漏出流が生じる機構に関しさらに研究を続けている。