日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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イネの遺伝子単離と機能解析における自然変異の利用
*矢野 昌裕
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p. S069

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抄録
品種・系統間に見いだされる変異(自然変異)は従来、複雑な遺伝を示すことから遺伝研究の対象になりにくかった。しかしながら、ゲノム研究の進展により、自然変異が遺伝子単離や遺伝子機能解析のための有用な研究資源として活用できるようになった。演者らは開花期(出穂期)をモデルとした一連の解析により、品種間変異に関与する量的形質遺伝子座(QTL)の染色体上へのマッピング、QTLの準同質遺伝子系統の作出およびマップベースクローニング法による遺伝子の単離・同定を進めてきた。これらの研究によって、品種間変異を決定している遺伝子が分子レベルで単離できることが立証され、その変異の原因となった塩基配列の違いを同定できるまでになった。単離された開花期関連遺伝子はいずれも開花制御における日長反応の遺伝経路を構成する要因であることから、自然変異の利用は日長反応の発現ネットワークの包括的解析に大きく貢献している。このような自然変異を活用したイネ複雑形質のゲノム遺伝学的研究解析手法は、環境ストレス耐性、病虫害抵抗性、形態変異および発芽特性などの品種間に内在する農業上有用な変異の分子遺伝学的解析にも応用可能である。モデル作物であるイネの遺伝子機能研究において、今後自然変異の解析が重要な役割を果たすことが期待される。
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© 2004 日本植物生理学会
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