抄録
2002年12月のイネゲノム完全解読宣言を受けて、2003年3月から、16名のイネ若手研究者(イネ10年計画ワーキンググループ)が、これまでのイネ研究において日本の研究者が果たした役割を総括し、イネ研究の現状の再確認を行い、そして、今後のイネ研究のあり方について議論し、これからのイネ研究に関する提案書を作成した。本発表では、その活動を報告すると共に、シロイヌナズナ研究を相補する単なる「モデル植物」としてのイネではなく、農業形質に目を向けた基礎研究を推進し、その成果を社会に還元する応用研究をも包括した研究を進めていく材料としてのイネ、すなわち、「モデル作物」として、イネを位置づけるべきではというメッセージをいくつかの事例を挙げながら紹介したい。なかでも、これからのイネ研究における中核となる分野として、イネ属の多様性(品種間差を含む)に基づいた研究を位置付け、その基盤となる研究を早急に立ち上げていく必要性を提言したい。さらに、基礎研究と応用研究を有機的に結びつけるために、マニフェスト型プロジェクトを立ち上げ、従来の組織、体制、職責にこだわらず、組織横断的な研究チームを立ち上げ、計画的・効率的に研究を進める事が重要であることを提案する。