抄録
シロイヌナズナでは、様々な経路からの花成シグナルはFT、SOC1/AGL20、LFY(経路統合遺伝子)に統合され、花成の最終段階に伝えられる。我々は「経路統合遺伝子」FTの機能に関心を持って研究を進めてきた。弱い遅咲き表現型を示すfdは、35S::FTの早咲き表現型に対しては非常に強い抑圧効果を示す。このことから、FD活性は35S::FTの早咲き表現型に必要であると考えられる。fd;lfyでは花芽分裂組織遺伝子の発現が減少し、35S::FDではこれらの遺伝子の発現が上昇していることから、bZIP転写因子をコードしているFDがFTと花芽分裂組織遺伝子を結ぶ遺伝子であると考えている。優性の花成遅延変異体fwaは、プロモーター領域のDNAメチル化の低下により、FWAが異所発現している。遺伝学的解析の結果、FWAはFTあるいはFTよりも下流の経路を阻害すると推測された。そこで、FWAを用いることによりFTより下流の制御経路についての情報が得られると期待し、FWAによって機能が阻害されるような蛋白質の探索を行っている。