抄録
細胞内共生によって獲得されたオルガネラ、ミトコンドリアと色素体(葉緑体)は分裂によってその数を維持してきているのであるが、その分裂機構は、進化の過程の中でバクテリア分裂様式と真核制御機構の融合体となっている。これら2つのオルガネラはまったく異なる機能性と形態を保持しているが、進化の初期の段階において、非常によく似た3つのリングからなる分裂機構を獲得していたことが、近年の研究から明らかとなった。原始的な紅藻、Cyanidioschyzon merolaeは、そのオルガネラが極めて単純な形態で、かつ同調的に分裂させることが出来、またそれらの分裂面に色素体分裂(PD)リングあるいはミトコンドリア分裂(MD)リングという構造体が観察できるという利点から、オルガネラ分裂の基本的なモデルとして確立されてきているが、このPD/MDリングに加えて、これらのオルガネラにはバクテリア細胞分裂因子であるFtsZと、真核生物特有のDynaminという2つのGTPaseがさらなる分裂リングとして重要な働きをしていた。これらの詳細な局在解析をもとに、それぞれのリング構造の機能は、分裂面の位置決定、収縮そして分断であろうと考えられる。