抄録
PPRタンパク質は高等植物のみでスーパーファミリー(シロイヌナズナで約450種、他の真核生物では10種以下、原核生物や古細菌ではゼロ)を形成しており、ほとんどは葉緑体やミトコンドリア中でRNAまたはDNA代謝に関わると予測されている。
核コードのHCF152遺伝子は、12個のペンタトリコペプチド(PPR)モチーフを持つ。シロイヌナズナのHCF152変異株は、葉緑体のpsbB-psbT-psbH-petB-petDポリシストロニックmRNAのプロセシングが損なわれている結果、光合成能を欠失している。
HCF152 タンパク質がどのように葉緑体遺伝子の発現を調節するかを明らかにするために、葉緑体中のHCF152 タンパク質、組換え体タンパク質を解析した。その結果、HCF152 タンパク質はホモダイマーを形成していた。一アミノ酸変異により、この結合が損なわれ、遺伝子欠失変異株と同様の表現型を示した。変異体で観察されるpetB mRNA イントロンのスプライシングの欠失と一致して、HCF152タンパク質はpetB mRNAのエクソン・イントロン境界のポリA領域に特異的に結合した。HCF152中のPPRモチーフ数を段階的に削除した結果、最低2個のPPRモチーフがRNA結合に必要であり、モチーフが増えるとともに、RNA結合親和性および結合配列特異性が上昇したことから、複数個のPPRモチーフが共役してRNA結合に働くことが示唆された。以上の結果から、オルガネラRNA代謝におけるPPR蛋白質スーパーファミリーの働きを考察する。