抄録
複二倍体であるタバコ(Nicotiana tabacum)の光化学系II表在性23-kDaタンパク質(PsbP)は、配列相同性によりグループI (1A、5B)とグループII(2AF、3F)とに分類できる4つのpsbP遺伝子にコードされており、グループIIが主な成分として発現している。本研究では、タバコにおいて2つのPsbPが存在する生理的意義を明らかにする為に、RNAi法により作出したグループ特異的PsbP発現抑制タバコの解析を行った。グループII抑制株ではPsbPの総量が野生株の2-3割程度であり、生育の遅延や葉の退色などの表現型が観察され、かつFv/Fm値及び単離チラコイド膜の酸素発生活性が極端に低下していた。一方、グループI抑制株では、PsbP総量は野生株の6-7割程度に減少していたが、生育や外見は野生株と全く違いがなかった。しかしながら、そのFv/Fm値及び単離チラコイド膜の酸素発生活性は野生株の7-8割程度の値を示し、全てのPsbPメンバーが発現している事が、植物体内で最大の光化学系II活性を発揮するのに重要である事を示唆していた。現在、各グループのPsbPに機能的な差が存在する可能性を検討する為に、グループII抑制株にグループI強制発現遺伝子コンストラクトを導入し、グループIのみを過剰発現する形質転換タバコを作製した。同形質転換体の表現型について、現在解析中である。