日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナ切断花茎の癒合過程における遺伝子発現の網羅的解析
*朝比奈 雅志山口 信次郎山内 雪香神谷 勇治鎌田 博佐藤 忍
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p. 029

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抄録

キュウリ、トマトの胚軸を用いた以前の我々の研究から、傷をつけた胚軸の皮層は切断後7日間で癒合すること、癒合過程の細胞分裂に葉からのジベレリンが必要であることが示された。本研究では、組織癒合に関わる遺伝子の機能解明を目的として、シロイヌナズナ切断花茎を用いたマイクロアレイ解析を行った。シロイヌナズナ花茎の第一または第二節間を、マイクロナイフを用いて半分まで切断処理を行い、一定時間後に切断部の上下約2-5mmの花茎を切り出し解析に用いた。その結果、非切断部の花茎と比較して二倍以上の発現上昇を示した遺伝子は、切断後1日目の花茎では621、3日目では773、5日目では663遺伝子であった。データベースを用いて、これら遺伝子を機能別にグループ化し、機能解析を行った。細胞分裂、細胞壁に関わる遺伝子に注目して解析を行ったところ、DNA合成、細胞周期の調節に関わる遺伝子は、主に切断後3日目の花茎で発現上昇が認められた。細胞壁に関わる遺伝子は、いずれの切断花茎でも発現が認められたが、細胞伸長・細胞壁多糖分解に関与すると予想される遺伝子は、主に切断後3、5日目で認められた。また、種子発芽時にジベレリンで発現が誘導される遺伝子との比較を行ったところ、発現が誘導された遺伝子のうち、3日目では26、5日目では24遺伝子が一致した。これらの遺伝子のうち、1/3~1/2が細胞分裂・伸長に関わる遺伝子であった。

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© 2005 日本植物生理学会
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